今回の記事では、ポーカーと確率というテーマで、”オッズ”という考え方についてお話します。
ポーカープレイヤーなら誰しも、相手のハンドを読み切り、最適なアクションをできたときは非常に気持ちよく思うものです。
もしかすると、「強い人は漫画の主人公みたく、超人的な読みに基づいた意思決定が常にできているもの」、と思っている方もいるかもしれません。
しかしながら、ポーカーのような不完全情報ゲームでは、よほど相手にテル(癖)や致命的な戦略ミスがない限り、相手のカードを1点で読み切ることは現実的ではありません。
大事になってくるのが、選択肢の数(≒レンジ)で考える、割合・確率で考えるという発想です。
「相手の持ってる可能性があるハンドに対して、こういうハンドには負けているけども、逆にこういったハンドには勝っていて、勝っている割合がこれくらいありそうだからコールしよう」
「ドローが引けるかはわからないけど、ドローが引ける確率がこれくらいなのに対して、相手のベットに対する必要勝率がこれくらいあるから、コールしよう」
上記は一例ですが、このようにハンド単体ではなく、選択肢の幅で考えるのが、ポーカーが強くなるための基本的な思考となります。
今回の記事では、そういったポーカーにおける確率思考の一テーマとして、”オッズ”という概念についてお話していきます。
必要勝率という概念
さて、あなたは以下の場面で、リバーでポット$100に対して、同額である$100のオールインを受けました。
当然、相手が何を持っているかはわかりませんが、
この時あなたはどれくらいの勝率があればコールできるでしょうか?
考え方を整理してみましょう。
まずは、コールして勝った時・負けた時の収支を考えます(チョップは考えないものとします)。
【勝った場合】
元々のポット$100+相手のベット額$100=$200の収入
【負けた場合】
自分のベット額$100の支出
勝った時は+200、負けた時は-100ということになりますね。
そう考えると、勝った時の収入の方が多いわけですから、勝率が半分よりある程度低くてもコールが利益的になります。
具体的には、1勝2敗であれば、ちょうどプラマイゼロになるわけで、つまりコールするには勝率が33%あればよいということになります。
必然、この勝率というのはベットサイズに応じて変わります。
具体的には以下のようなイメージです。
potに対するbet額の割合(%)/必要勝率(%)
200%/40%
100%/33%
50%/25%
33%/20%
このように整理してみると、相手のbetにコールする際は、必ずしも勝っていることが多くなくとも、必要勝率を上回っていればコールすることが利益的になることがわかります。
実戦での活用例-ドローのオッズを考える
さて、続いてはこの必要勝率の概念が、実戦のどういった場面で活用できるかをお話していきます。
例えば、以下のような場面を想定してみます。
自分は45スートを持っており、フラッシュドローがありますが、現状5ハイで相手の何のハンドにも勝っていなさそうです。
ボード的にも、4や5をヒットしたところで勝っている可能性は薄く、フラッシュを引かなければ勝てない状況といえるでしょう。
では、フラッシュを引けば勝ち、引けなければ負けると仮定した場合、必要勝率はどれくらいになるでしょうか?
まず、フラッシュが完成するカード数(アウツ)を考えます。
トランプで同じスートは13枚あります。
そのうち、ボードと手札で2枚ずつ合計4枚使っているので、残りは9枚です。
そうすると、
【リバーで開かれるカードの種類】
52枚(デッキの枚数)-6枚(場・自分のハンドの枚数)=46枚
なので、フラッシュをリバーで引ける確率は
9÷46=19.56…%となります。
これでは、相手のpot1/2betに対する必要勝率25%を満たさないため、一義的にはフォールドするのが利益的になりそうです。
こういったドローが完成する確率を簡易的に見積もる方法として、「2倍・4倍の法則」というものがあります。
これは、アウツの数にターンなら2倍・フロップなら4倍をかけると、おおまかな必要勝率が求められるというものです。
今回の例に当てはめると、リバーで引ける確率は9枚×2で18%となり、大体元の計算と一致しますね。
実戦での考え方-発展編 インプライドオッズの概念
さて、ここまでは単純にその場でのベットに対する勝率を求めてきましたが、実戦はそう簡単ではありません。
なぜならば、もしドローを完成して強い役となった場合、後のストリートでチップがポットに入ったときに、プラスアルファの利益を得ることができる可能性があるためです。
例えば、先ほどの例で考えてみましょう。
先に計算したように、50%betに対する必要勝率は25%、フラッシュを引ける確率は20%に満たない程度であったため、単純なオッズ計算ではフォールドすることが正しくなります。
しかし、例えばリバーでフラッシュを完成させた場合に、ベットして相手から追加でチップを取れるとなるとどうでしょうか。
このインプライドオッズは正確に計算するのが難しいところですが、少なくとも単純なオッズだけ考えると境界線上になる場合は、インプライドオッズの観点からコール以上が正当化されやすい、という認識は持っておいても良いかと思います。
まとめ
・必要勝率は、ポットに対するベットサイズによって求められる
・アウツと必要勝率を求める場合、”2倍・4倍の法則”を用いて簡易的に求めることができる
・単純な目の前のオッズだけなく、後のストリートで得れる利益(インプライドオッズ)も考慮することが肝要